アカデミー賞大本命!Netflix映画「ROMA/ローマ」でモノクロの美しさを知る。

映画

こんばんは。深夜の静けさが好き、さめおです。

今日のテーマは今年度のアカデミー賞で最多10部門へのノミネートが発表されたばかりのNetflix映画「ROMA/ローマ」です。監督は2013年公開の映画「ゼロ・グラビティ」で本作と同じくアカデミー賞へ最多10部門ノミネートされ、監督賞も受賞したアルフォンソ・キュアロン。5年ぶりの新作となる本作ですが、その内容は…?まずはあらすじから。

あらすじ・予告編

舞台は70年代初頭のメキシコ。医者のアントニオ(フェルナンド・グレディアガ)と妻ソフィア(マリーナ・デ・タビラ)、4人の子どもたちと祖母が暮らす中産階級の家で家政婦として働く若い女性クレオ(ヤリッツァ・アパリシオ)は、子どもたちの世話や家事に追われる日々を送っていた。そんな中、クレオは同僚の恋人の従兄弟である青年フェルミン(ホルヘ・アントニオ・ゲレーロ)と恋に落ちる。一方、アントニオは長期の海外出張へ行くことになり…。

ROMA | Teaser Trailer [HD] | Netflix

解説・感想

本作は昨年8月に行われた第75回ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミアが行われると、同映画祭のコンペティション部門で、最高賞にあたる金獅子賞を受賞。その後も各映画祭の主要部門を総ナメにしており、第91回アカデミー賞でも主要部門を独占している注目作です。

このアカデミー賞関連で特に注目すべきところが2点。まず本作はほとんどのシーンがスペイン語で撮られているため、アカデミー外国語映画賞の受賞資格があります(今年度で言えば是枝裕和監督の映画「万引き家族」も同賞にノミネートされていますね)。そのため当然外国語映画賞にはノミネートされているのですが、加えてアカデミー賞のメイン部門とも言える作品賞へもノミネートされています。これはアカデミー賞の歴史上初めての事。

更に本作はNetfilixで配信されるいわゆる”動画配信サービス製作映画“の一つなのですが、このような作品が作品賞にノミネートされたのもアカデミー賞史上初です。今までは劇場公開作品しか選ばれず、配信作品は選考対象外とされるケースも多かったため、この快挙が映画界へ与える影響はかなり大きなものになるでしょう。現在では大物監督や俳優がどんどんNetflix映画へ参加し始めているので、仮に本作がアカデミー作品賞を受賞する事があれば、映画製作の環境は更に変わる事になると思います。

さて、こんな形で賞レース絡みのニュースが非常に多い本作。監督は2013年にリアルな宇宙サバイバルを描いた映画「ゼロ・グラビティ」を作った名匠、アルフォンソ・キュアロンです。本作では監督の他に脚本集、製作、そして撮影監督までもこなしています。前作から5年もの期間を要したのもこのこだわりっぷりからでしょう。

それでは本題。本作鑑賞後の感想ですが、特筆すべきは美しすぎる映像。本作は全編モノクロで撮影されているのですが、何故かカラー作品以上の美しさを感じる、不思議な作りになっています。モノクロ映画で賞レースを席巻した作品と言えば2011年に公開された映画「アーティスト」が有名ですが、こちらはラストのとある表現を行うために仕組まれたモノクロ映画と言えます。それに対して本作は最後までずっとモノクロで進みます。これは本作がキュアロン監督の少年時代を元に描いた半自伝的な作品であり、彼の記憶の世界である事を表すためにモノクロ化したようです。確かに古い記憶ってなんとなくモノクロのイメージありますね。

そんな映像で描かれるのは1970年代のメキシコで暮らす、ごく普通の一家。本作ではその一家に仕える家政婦を中心に物語が進みますが、世界を揺るがすような大事件は起きず、彼女の世界を淡々と、しかし丁寧に描いています。例えば序盤、ただ床の清掃をしているだけのシーンが美しいんですよ。カメラを動かさずに清掃で流す水を切り取り、そこに美しい空飛行機を映す。おそらくこのシーンは家政婦として狭い世界で生きる主人公クレオの対比で自由の象徴としての”飛行機”を映しているのだと思います。こんな些細な日常の切り取り方が都度秀逸で、キュアロン監督のセンスが光りまくるシーンが随所に散りばめられています。

そしてもう一つ特徴的なのがキュアロン監督作品で定番と言える長回し。前作「ゼロ・グラビティ」でも冒頭17分一度も途切れない長回しが話題になりましたが、本作でも17分までにはいかずとも長回しシーンが多数。日常を切り取るようなシーンが多く、ドラマチックな部分以外もぶつ切りにせず映してくれるため、作品への没入感が生まれます。ちなみに本作ではキュアロン監督作品で毎回撮影監督をしていた盟友、エマニュエル・ルベツキがスケジュールの都合で不参加だったのですが、長回しシーンは明らかにルベツキを意識したカットが多かったと思います。これは長年一緒に作品を作ってきたキュアロン監督だからこそできた技でしょう。

このように画面の美しさは全員一致で称賛される部分でしょうが、ストーリーに関しては合わない人もいるかもしれません。先程も書いたように本作で起きる事件は基本的に主人公もしくはその周りの人たちの間で起きる事件のみ。終盤少し大きな騒動もありますが、あくまでも主観的な内容が多く、その大きな事件は一種のスパイス的な要素に過ぎません。個人的には少し前に話題となったアニメ映画「この世界の片隅に」を思い出しました。こちらも戦争の悲惨さを描きつつ、あくまでも主人公のまわりの生活をリアルに映していましたが、あんな感じで身の回りの事件をしっかり丁寧に描いているのです。そういう意味では少し日本映画らしさはあるかもしれませんが、ストーリーに起伏を求める人は合わないかもしれません。

しかしその淡々とした描写の中にも、現代に通じるテーマが色々と入っています。まずは今の映画界でも特に取り上げられやすい女性の強さについて。本作の主人公クレオは女性の家政婦ですし、雇い主夫婦の奥さんソフィアも裏主役と言えるポジション。それに対して2人の相手役である男性は”悪役“とまではいかずとも、女性に試練を与える役どころに徹しています。特にクレオの相手役であるフェルミンはなかなか胸糞悪い展開を作ってくれますが、これにより力強く生きる女性が魅力的に描写されているのです。そして家政婦であるクレオとその雇い主家族の間で徐々に絆が結ばれていき家族の一員となっていく様は、SNS全盛の現代にはなかなか観られない、繊細で密接な家族像を描いています。

また本作の舞台は1970年代のメキシコですが、その背景にはまだ不安定だった国の内情があります。これはキュアロン監督の少年時代と一致しており、普通の家族の裏で自由を求めて戦う人たちの姿も描かれています。僕自身メキシコに関しては少し調べた程度の知識しかありませんが、当時のメキシコは経済格差などから隣国アメリカと比べて自由度が低かったため、政府へ不満なを持つ民衆が多かったようです。そのため学生デモなども頻発しており死傷者も出ていたとの事。この部分は現代のトランプ政権への批判へ通じるところがあるとも思うのです。メキシコとの国境に壁を作る政策やアメリカ内でも出てきている貧富の差、この辺りを裏テーマとして映画に取り入れたかったんじゃないかなと思います。

まとめ

評価:☆☆☆☆★(4/5) とにかく美しい、心に残る映画です。

美しい映像の裏にある、醜さ力強さが見え隠れする人間ドラマ。そして当時のメキシコ内情を使った現代社会への風刺など、ただのアート作品では終わらせない気概が感じられた一作です。同じくアカデミー作品賞候補である「アリー スター誕生」は個人的に重すぎて辛かったので、作品賞選ぶならこっちかなぁ。あとは「グリーンブック」とか日本未公開作品もありますが、本作の方がアカデミー会員に好かれそうな気がします。キュアロン監督の長回し描写や撮り方が好きな方賞レース絡みの映画は観たいという方強い女性の映画を観たい方には特にオススメです!ある意味環境音を楽しむ部分もあるので、是非静かな環境で…。

今日はこんなところで。ではまた。

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